食品の安全とリスクのはなし

食品安全に関することやリスクコミュニケーションについて考えていることを書いています。

食品添加物の不使用表示に関するガイドライン案に関する意見募集の結果について

表記の通り、食品添加物の不使用表示に関するガイドライン案に対するパブリックコメントの結果が公表されました。

 

私自身はこのガイドラインに反対する要素はありませんでした。反対の意見を述べている方々は基本的に添加物が危険であるから、それを避けるための無添加表示は必要である、それは消費者の知る権利であるというスタンスのようですね。
 
無添加の商品には優位性があるという考えは、そのまま食品添加物が危険であると言っているのに等しいのです。これが問題なのです。ありもしない添加物の危険を恐れる消費者がいて、その消費者のミスリードを利用してマーケティングしたい事業者もいて、両者が歪んだ市場を作り出しているのです。反対意見を表明している方々は理解していないようですが、今回のガイドラインはこの間違った考えと状況をただすことがスタートラインになっています。無添加表示を放置することは食品添加物が危険であると間違ったメッセージを出し続けることになってしまうのです。
 
容器包装された食品であれば食品添加物が使用されているかは一括表示を見れば確認することができます。無添加表示は単にそれを強調しているにすぎません。消費者は十分な情報を一括表示から手に入れることができます。あなたが賢明な消費者であるならば、はじめからこんな無添加表示は必要ないのです。
 
とはいえ、一括表示上で添加物の記載がなかったとしても、実際には加工助剤やキャリーオーバーによって使用されていても、(最終製品に残っていないので表示する意味がないので)表示されていないケースがあります。
 
ここに消費者にミスリードして欲しいという事業者側の下心が加わります。原材料を含めればほとんどの加工食品で何らかの添加物が製造工程のどこかで使用されています。それにもかかわらず、(健康上全く意味のない)無添加を強調表示することは消費者を誤認させる行為である。というのがこのガイドラインの基本的な考えです。
 
そもそも添加物が危険、できれば避けたいという考えがナンセンスなのです。添加物が通常使用される量で人体に危害が及ぶことはあり得ません。添加物に限らず、なにかの危険論はたいていの場合、量の概念を無視しています。
 
例えば塩は食品ですが、これを両手いっぱい一気に飲み込んでみたらどうなるでしょうか。恐らくは高ナトリウム血症で命を落とす可能性が高いです。塩をいっぺんにそんなに飲み込めるはずがない、というのであれば水はどうでしょう。実は水も10Lほど一度に飲み干すと水中毒を起こし今度は低ナトリウム血症によって命を危険にさらすことになります。夏の暑いなか、1Lのペットボトルを飲み干すことはあるでしょう。そのたった10倍程度で命を落とす可能性があるのです。
 
つまり添加物が危険なのではなく、どんな食品でも食品添加物でも極端な量を摂取すると身体に悪影響があるということです。食品添加物があなたに悪影響を与える程の量を食事から摂取することは事実上不可能なのです。当たり前ですが、食べ過ぎそのもの方があなたの健康に悪いことは明らかです。
 
そんな些末なことを気にするよりも、素直に豊かな食文化、食生活のある日本に生まれ育ったことをもっと喜び、楽しんだらいいのにな、と私は思います。